インタビューの第4弾となります!

今回は、公演第1回よりオーケストラ演奏の指揮をされている指揮者の 磯部 省吾 Shogo Isobeさんです!


ダンサーと演奏者を繋ぐ、磯部さんのお声を皆さまにお届けします。


指揮者の磯部さんが語るチャイコフスキー音楽の裏側や名作「白鳥の湖」に関する意外な話など…
音楽とバレエの知られざる一面をご覧ください!




Q.チャイコフスキー作曲バレエ「白鳥の湖」の音楽の魅力とは?

不朽の名作「白鳥の湖」はバレエの代名詞のように言われていますが、意外なことに1877年の初演時には決して芳しい評価が得られず、むしろ失敗作との烙印が押された作品でもありました。

振付師がよくなかったとか、ダンサーに恵まれなかったとか…失敗の原因を彼(チャイコフスキー)以外のところに求める評論が多いのですが、実のところチャイコフスキーの作品そのものにも失敗の一因はあったのでした。
無論、音楽的品質が劣っていた訳ではありません。クオリティはそれまでのバレエ音楽とは一線を画す、秀逸なものでした。ただバレエ音楽として彼の音楽はあまりにも長すぎたのです。

次から次へと頭に浮かぶアイデアがどれも捨てがたく、思いの丈が詰まりすぎた作品になってしまった結果なのでしょう。過ぎたるは及ばざるが如し。長大になりすぎたチャイコフスキーの音楽はそのままではバレエに適さない作品となってしまっていたのでした。

初めてのバレエ作品に失敗したチャイコフスキーは、長らくバレエの世界から遠ざかります。バレエ音楽として二作目の「眠れる森の美女」までには、実に13年のブランクがありました。
二作目と三作目「くるみ割り人形」までの間がわずか2年だったことと較べると、彼の失意のほどがうかがえるというものです。

「眠れる森の美女」と「くるみ割り人形」の大成功によって、チャイコフスキーはバレエ音楽の大家となりました。しかし彼の大成功の陰には、名振付家プティパとイワノフの存在があったことは見逃せません。
プティパは「眠れる森の美女」の振付家として知られていますが、この作品の作曲にあたっては、細かな注文書をチャイコフスキーに送っています。

バレエ「白鳥の湖」はチャイコフスキーの没後、プティパ&イワノフによってリメイクされました。これが世に言う蘇演版「白鳥の湖」でこれがバレエの代名詞となった作品という訳です。

蘇演版は長すぎる楽曲を短くしたり、曲想とドラマがしっくり来るように配置がえしたり、チャイコフスキーの他の作品を流用したり、それでも足りないところは別の作曲家が補作したりして今の形になったのです。

チャイコフスキーの作った原曲「白鳥の湖」からは多少音楽風景が変わっているので、この蘇演版をチャイコフスキーがみたらどう思うでしょうか。

原作に手を加えられたことにご機嫌斜めになるのか、それとも、なるほどこうすれば初演に失敗しなかったんだ、と膝を打つのか。興味深いところです。



Q.チャイコフスキーの三大バレエについて

ご存じのようにチャイコフスキーは、その生涯で3つのバレエ作品を書きあげました。
それぞれの作品が発表されたのは「白鳥の湖」(1877年)「眠れる森の美女」(1890年)「くるみ割り人形」(1892年)ですが、この時期は【交響曲「第4番」「第5番」「第6番」】の作曲時期と重なります。
チャイコフスキーの後半生の作風を知る上で、興味深い符合だといえます。

無論、シンフォニックな響きの交響曲と舞踊性の高いバレエ音楽とで同列には語れませんが
作品にアプローチする上では重要なヒントとなる部分も多く、これらの交響曲はバレエ音楽を演奏する音楽家たちにとって欠かすことのできない道しるべとなっています。




Q.「白鳥の湖」のお気に入りの曲は?

バレエといえばワルツです。
数あるバレエ作品のなかでこの「白鳥の湖」も多様なワルツが散りばめられた作品となっています。
これらの数あるワルツも魅力的なのですが、やはり1番印象に残るのは第2幕の「情景」でしょう。

ハープのアルペジオに乗せて、哀愁を帯びたオーボエの旋律が奏でられます。
バレエ「白鳥の湖」を代表するこの旋律は、ドラマのライトモティーフとしてここかしこに散りばめられていて聴く者を魅了します。

ちょっと私的な話で恐縮ですが、個人的にはかつてオーボエを吹いていたこと、小学校の器楽クラブの十八番が「情景」だったことで、この楽曲には格別の思い入れがあります。



Q.公演をご覧になるお客様へ一言

バレエとは「目で見る音楽」です。
奏でられる音楽と一体化するダンサーの躍動に、ぜひ目を凝らしてみてください。

バレエは、言葉のない演劇でもあります。
言語を越えたボディランゲージで語られる物語は、直感的で理解しやすく、初めてみてもあらすじの見当がつく優れた特徴があります。無論音楽も直感的であり、そのふたつの効果が観る者を一気にバレエの世界に誘います。

「県央地域に舞台芸術を育む会」が発足してから本当に大勢の方が「バレエ初体験」されました。
そして、それらの方々は口々に「初めてなのにすごく分かりやすくて楽しめた」とおっしゃっています。

この好感度はクラシック・コンサートや演劇公演を越えており、並び称されることの多いオペラよりも遥かに高い支持を集めています。

一見「バレエ」というと敷居が高そうですが、数あるアートのなかでバレエほどとっつきやすい分野はありません。そのくせ、知れば知るほど奥が深いのもバレエです。

バレエの代名詞「白鳥の湖」ぜひとも会場に足を運んで存分に楽しんでください。
皆さまのご来場をお待ちしています。